吹雪
例年なら自宅のさくらんぼの花が咲いてから都内のソメイヨシノが
咲くまでは一・二週の間しか無いのだが、今年は大きく間が空いた。
おかしな機構、もとい、気候の影響を受けて開花状況も乱れたのか。
毎年恒例となっている南砂緑道公園での花見は、日程調整も難しく、
四月第二週までずれ込んだ。当日我輩は、当然の如く振休を取った。
もちろん場所取り目的である。例年の混雑状況から得た知見である。
今年もカセットコンロをキャリーに入れて準備する。敷物を探して
玄関の棚を開けると、空気で膨らませる、プールで遊ぶマット的な
物体を発見。これは良さそうだ、ということで諸々詰め込んで行く。
現地に着いたのは午後二時頃。気温は高い。うっすら汗をかいてる。
それでも重たいキャリーをゴロゴロ転がして緑道にたどりつく、と。
それはもう。息を飲むほどの桜、桜、桜のロード。春が踊っている。
いい具合の枝振りの木を見つけ、敷物を敷き、占拠だ。意外な事に
今年は全然、人が居ない。ほぼ無人だ。あの激しい場所取り競争は、
どこへ行ってしまったのだ。ひょっとするとこれが不景気って奴か。
桜並木の下で、自分しか居ない。マット的な何かを吹いて膨らませ、
天を仰いで横たわる。桜色に蹂躙された視界の端端に青空が見える。
時折、さ…っと流れる風に吹かれて、猛烈な量の桜吹雪が舞い踊る。
こういう情景に包まれている時間を、「幸せ」と言って良いだろう。
道行く人達からは不審者を見る目で見られるが、構うものか。春だ。
此処に春が溢れており、我輩は春にまみれて休日を過しているのだ。
ごろりと転がったまま、何も生産せず、口も開かず、無駄な時間を
全力で費す。考えることすら放棄して、舞い散る花びらに埋もれる。
愉快だった。堕落した怠惰な人間の見本。意図して何もせぬ、時間。
意識を失いそうになっていると、後輩から電話があった。夜の部に
乱入しなさいと説得したところ、うまいこと合流に成功。日が落ち
暗くなった中で、気心の知れたメンバと、提灯の灯で花見酒である。
仲間達に、感謝。来年もまた、ここに皆が来られることを祈りたい。
2 Comments:
>堕落した怠惰な人間の見本。
それは違いますよ。
昔から日本人は桜と縁が深いですから
桜を見て感慨に耽るのは決して堕落でも怠惰でもないですです。
久方の 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ。
正にこの心境じゃないですか♪
その時を大事にしてくださいな。
>ノブ氏
なるほど… ってことは、
2週間くらいあの公園に横たわってれば
何か開眼できたかもしれませぬな…
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