廃止
自分が会社に入って最初に繋がったネットワーク。大先輩と一緒に
DNS やらルータやら、サブドメインの管理に必要なサーバを組んで
提供していた、自分がネットワークを学ぶ契機となった小さな世界。
今日、そのサブドメインに引導を渡して来た。自分が居なくなって、
組織もなくなって、管理をする者も居なくなって、そうして廃れた
小さなネットワークでは、十年前に組んだサーバがまだ動いていた。
今月末でマシン室を出て行け、と言われているから、しょうがない。
利用する者の居なくなったサブネットを廃止するのは、当然だろう。
自律的に自己最適化するのは正にネットワークの真骨頂じゃないか。
自分でももちろん納得している。それなのに、機器達の電源を切る
その瞬間を、延ばそう延ばそうとしていた。切りたくなかったんだ。
休日に、一人で作業しに来てよかった。誰にも見られたくなかった。
ケーブルを丸めながら、自分が丸められている気がした。どうして
そんな気持ちになったのか、自分でもわからない。埃で汚れた指は、
指紋センサに読取拒否された。濡れたハンカチで拭いて、退室した。