Monday, July 30, 2007

横型

長らく、鞄がどうしようもない状態だった。ファスナーは閉まらず、
そこらじゅう穴だらけ。十年くらい使ってきただろうか。ハードな
時期を一緒に過ごしてきた奴だ。ぼろぼろではあるが、愛着もある。

ファスナーのコーナー部分が摩耗でジャムりはじめた頃は、自分で
針糸持ってちくちく直したものだ。ちょっとした LAN をどこででも
組めるほどの量の装備を持って歩けたのも、この鞄のおかげだった。

フル装備で平均 5Kg 位だったろうか。搭載量も耐久性も問題なく、
唯一の弱点は A4 を綺麗に運搬できないことだけだった。そういう
観点で半日、新しい鞄を探し回った。難しいものだねぇ、買物とは。

本音を言えば弱点は継続でもいいから、全く同型の鞄が欲しかった。
もし売っていたら、二個買ったと思う。そうすれば向こう二十年は
鞄のことで悩まずに済むだろうから。しかし、見つけられなかった。

結局選んだのは A4 横型だ。学生の時から A4 縦を使ってきたので
横型には若干の抵抗があるのだが、縦型には良いのが無かったのだ。
しかし弱点だった A4 の運搬もクリアできたし、頑丈そうに見える。

前の鞄はどこに何がどのように入っているか全て把握していたので、
手先の感覚だけで必要なものを取り出すことができた。今度の鞄が
そこまで手に馴染むのには、どのくらいかかるだろうか。楽しみだ。

Tuesday, July 24, 2007

書店

K 町の交差点にある、「武蔵書店」。このたび店仕舞いするらしい。
夜中の 26 時まで営業している、貴重な店だった。我輩はもっぱら
文庫本とコンピュータ雑誌しか買わなかったが、品揃えは良かった。

漫画だろうが文庫だろうが、ちらちらと数箇所を開いてみて感触を
確かめるたり、本棚に並んでいる姿を実際に見たりするのは大事だ。
本もオンラインで買える時代だが偶然の出会いはアマゾンにはない。

作家は減っていないだろうに、読者も減っていないだろうに、なぜ
本屋が店仕舞いなんだろう。後継者不足か。多様化の爆発が原因か。
意外と儲からないのか。何にしろ馴染みの店の閉店は寂しいものだ。

Tuesday, July 17, 2007

暗号

「暗号解読」も読破した。こちらは泣くポイントはあったけれども
涙腺は開かなかった。単純に、著者の説明の上手さに嫉妬を覚えた。
ペンキか。南京錠か。たとえ話もここまでピタリと嵌まると美しい。

コンピュータの世界を生業とする者なら、一読して背景やドラマを
垣間見ておくことをおすすめする。今後もまた、明かされなかった
歴史が暴露されることで過去の書き換えが発生するかもしれないが。

Friday, July 13, 2007

定理

「フェルマーの最終定理」という本を、早耳の人からすれば今さら、
読んだ。我輩は自称「数学なぞ理解できない」人種の一人であるが、
この本は単なる数学の本ではない。むしろ歴史ドキュメンタリーだ。

一つの大きな「謎」が三百年かけて解かれて行く様子が、あたかも
見てきたかのように描かれている。数学者達がどのように取り組み、
どのように感じてどのように生きたか、が描かれている、ドラマだ。

ついに最後の一ピースがはまる時、不覚にも涙腺が緩むのを感じた。
八年間も「それ」一つのために不断の集中を注ぎ込むことの、何と
偉大であることか。努力が結実することの、何と喜ばしきことか。

数学者達の編み出してくれた数々の謎の数式のおかげで、今まさに
我輩は生計を立てているのであり、足を向けて寝られない。彼等の
偉業に感謝しつつ、この本はぜひ中高生達にも読んでほしいと思う。

Sunday, July 08, 2007

拾得

E戸川橋でその人は降りようとしていた。荷物をまとめ立ち上がり
扉に向かって歩を進めたその時、何やら白い小さなものが落下した。
一目でハンカチだとわかった。本人が気づいてないこともわかった。

まだ駅に着くまでは間がある。だが恐らく気がつかないままだろう。
拾って渡してやるか。と思った矢先、ふと対面の少年と目が合った。
その少年も彼女がハンカチを落したことに気づいていた様子だった。

一瞬二瞬のアイコンタクトの後、少年の動きは敏捷だった。素早く
ハンカチを拾いあげ「すいません」と、声を掛けた。自分が落した
ということにすぐ気づいたようで「すいません」と受け取っていた。

いい動きだ、と思って何となく少年が席に戻るのを見ていた我輩に、
再び目線を合わせて、彼はニカッと笑った。よかったね。言葉には
出さずとも、そう言っている顔だった。我輩も微笑んで頷いていた。

Monday, July 02, 2007

麻痺

デスソースの辛さにはだんだん麻痺してきたような気がする。先日
呑み会でカイエンペッパーらしき赤い粉末をダイレクトにモサモサ
喰ってみたら、意外とイケた。容姿のみならず味覚も豚並か>我輩。

先月は一ヶ月のうち十三日もセンタで暮らしていた。あまりに遠い
通勤…っていうより出撃とか帰投とかそんな語感…に嫌気がさして
帰宅を放棄して寝たことも数回。住み心地が良いとか感じたくない。

地面が繋がっているからにはどこへだって歩いて行ける、と信じて
疑わない性格は変わってないが、だからと言って別に歩かなくても
目前を過ぎ行く TAXI を捕まえることに何にも抵抗を感じない日々。

我輩というこの奇怪な生物は、いろんなことに麻痺できるものだな、
と感じる。しかしながら雨も降ってないというのに異様に湿っぽい
今年の梅雨の体感的な不愉快さには、到底慣れられるとは思えない。