村祭
或る処に小さな小さな村があつまった、それでも小さな村があった。
全体を束ねる村長は、それぞれの村からの租が少ないので腹を立て、
いったんバラバラにして、全然違う形に組み替えてみることにした。
各々の村には小さいなりの水路や道路が整備されていたが、村長の
考えた新しい村の形ではそれらの設備をそのまま使えないところが
大半であったが、どれだけ大変か考えもせず、作り直すことにした。
住民が引っ越す先の新しい番地はとっくのとうに決まっていたのに、
村長の知恵の足りない取り巻き達は計画を明らかにしなかったので、
人々は誰も新しい町並の水路や道路を準備することができなかった。
ちゃんと準備するべきだ、と主張する青年たちも少なくなかったが、
与えられる生活に馴れてしまっていた大人たちは耳を貸さなかった。
そして、いざ直前になって、何も準備できていないことが判明した。
人々は慌て出したが、もう遅かった。全てがぎくしゃくしてしまい、
今後の繁栄を願うための礎づくりたったはずの村の組み替え計画は
単なる無秩序な民族大移動にすぎないものへと、変貌してしまった。
それでも大人たちは異口同音に自分達の責任ではないと言い張った。
彼らの無責任さは、結果として歪んだままの町並に住まざるを得ぬ
不幸な者を生み出すことになった。心ある若者たちは憤り、呆れた。
多くの国民が思い思いに自分の自由なように過ごせるはずの時間を、
この村の住民たちだけは不条理でなんの納得もできない強制労働に
駆り出されることになった。諾々と従う様は、もはや哀れであった。
目的もなく、ただ騒がしいだけの集団行動。誰が得するわけもなく、
地に足が付かないから、妙に浮わついた心持ちになる。終わっても
何にもならないなら、せめて楽しむしかない。この下らない村祭を。
# っていうか村長、お前も移動しろよ。言い出しっぺなんだからさ。